生産者インタビュー①│【大島】廃校の小学校で“うつぼ”の特産品づくりに挑戦
※本コラムの内容は、令和6年3月現在のものです。
日頃、アンテナショップ東京愛らんどに商品を卸してくださっている生産者の皆様に取材を行いました。普段私たちがなかなか知ることのできない生産者の苦労や努力が垣間見れるコラムとなっています。ぜひ島で暮らす生産者の息遣いを、特産品を通じて感じてみてください。
■伊豆大島漁業協同組合加工部
アンテナショップ東京愛らんどで絶賛販売中の伊豆大島の水産加工品「うつぼの旨揚げ」「波浮天」「うつぼだし」。
実は廃校になった波浮小学校の図工室のスペースを利用して商品づくりが行われているそうです。
-なぜ、図工室で商品づくりを始めることになったのですか?
岡村さん:当初は水産試験場の解剖室を借りて2年くらい加工部の活動をしていたんです。
その後、廃校になった波浮小学校の改築予算が降りたので移転してきました。
補助事業なので、空いているスペースを有効活用したいという町の意向が大きかったのだと思います。
-小学校に移転して今年で10年、これまでどのくらい商品を作られましたか?
岡村さん:移転前の3~4倍はあると思いますよ。
その時獲れた魚で対応をしているので、200種類以上はあると思います。
スタッフ:それはすごいですね…!
岡村さん:元々この事業体は定置網漁業をやっていて、内地へ出荷するのに赤字になってしまうような未利用魚(型の小さい魚や獲れすぎた魚)は海に捨てていました。
ですがそんなこと言ってられない時代になってきて、なんとかお金に変えようということで立ち上げた事業体なんです。数年前台風の影響で定置網が壊れてしまったため、現在は漁師さんが獲ってきてくれるお魚で対応しています。
-“来る魚すべて無駄なく使用している”とのことですが、商品アイディアは一体どなたが考えているのですか?
岡村さん:私がすべて考えています。
商品づくり以外にも、例えば旅館さんには内臓や鱗を取り、切り身を入れて真空パックにした魚を1匹まるごと急速凍結にしてお納めしています。
給食なんかだと、保育園や小学校は骨があると危険なので、中骨はすべて取り除きスティック状にしたものを納めています。
切り身にして残った部分は南蛮漬けにしたり、さらにもっと細かいのはミンチにしてほかの魚に合わせてハンバーグにしたりさつま揚げにしています。
スタッフ:注文先に応じて岡村さんの工夫や配慮が施されているのですね
岡村さん:元々学校給食の栄養士をやっていたんです。
栄養士側の苦労が分かるので、どうしたら子供たちが食べてもらえるか小学校の先生方と一緒に考えています。上がってきた魚で、これは高校の寄宿舎だと200食ぐらいだから、この魚だったら切り身で200ぐらいはちょうど取れるかもって思うと、栄養士に電話して交渉することもあります。」
-栄養士のあと、生産業をはじめられたということですか?
岡村さん:いえ、栄養士の後はJF全漁連で営業職をしていました。JAさんに全国から集めてきた魚を売りにいくことをしていたのですが、方針が変わって自分たちで商品をつくろうということになり、商品開発の新規立ち上げを私一人で行いました。今この加工部があるのは全漁連のおかげです。
スタッフ:今までやってきたことがすべて現在に活かされてるんですね。
岡村さん:そうなんです、まさに今が集大成です(笑)
-うつぼの商品ってこれまで東京愛らんどであまり見たことがなったのですが、どういった経緯で生まれた商品なのでしょうか?
岡村さん:定置網が無くなり、魚自体があまり入ってこないのでどうしようか悩んでいるとき、苦肉の策としてお魚屋さんに流通しない“うつぼ”に手を出しました。
元々大島では獲れちゃったうつぼを食べる食文化はあったんですよ。
でもわざわざ獲ってきて干物にして売ることはしていませんでした。
そんな中、うつぼ学会の方がたまたまお店にいらっしゃったとき、うつぼは成魚になるまで8年かかる、夏場は産卵期だから大事にしなきゃいけないという助言をいただき、年間3tまでというルールを決めて漁師さんに獲ってきてもらう事業をはじめました。
「うつぼの旨揚げ」が一番初めにつくったうつぼの商品だったんですけど、
それまでうつぼは取り上げたことがなかったので、完成させるのにものすごく苦労した商品です。
開発までは2~3か月でしたが、少し気を緩ませると製品にならない。
揚げる時間や調味料など少しでも違うとカビてしまったり、出来上がりが全然違います。
しけちゃうとダメなので、お天気のいい日しか作れない商品です。
二度揚げして鍋で振るんですけど、たくさんの量はできないのでそれを何回も繰り返します。
最近アンテナショップに卸すようになった大島のうつぼに5種類の出汁をブレンドした出汁のパック「うつぼだし」も、私が粉末を開発しました。
島でものすごく売れてるんですよ。
うつぼって食材にするには骨が入り組んでるからすごく手間がかかるのですが、尻尾や頭の骨を乾燥させてそれを叩いて叩いて粉末にして、もう一度ミールにかけて商品として納めています。
「波浮天」は、カツオをベースにしていて、いさきのミンチを入れたり、うつぼの尻尾を入れたりとか、その時獲れる魚によって違うので、商品の原料は地魚とだけ書いています。その時によって味も少し変わってきます。
スタッフ:季節ごとに変化を楽しめますね。
岡村さん:素材にもこだわっていて、添加物は一切入れていません。
魚以外は山芋と片栗粉、卵、ニンジン、明日葉を入れています。調味料も、塩は大島で採れた塩です。
スタッフ:できるだけ無駄にしないように、魚をすべて使いたい。まさにサステナブルですね。
岡村さん:はい、とくに「波浮天」は無駄なくすべての魚を使った商品なのでSDGsそのものですね。
-最後に、アンテナショップ東京愛らんどにお買い物に来られるお客様へメッセージをお願いします。
岡村さん:東京諸島は売るのだけでもそれぞれの生産者がご苦労されていると思うのですが、それが伝わればいいなと思っています。各島に頑張って作った商品があるので、ぜひアンテナショップ東京愛らんどを通じて知っていただけると嬉しいです。
このコラムで紹介された商品は、アンテナショップ東京愛らんどで販売中です。
お立ち寄りの際はぜひお試しください。
▽▼ECサイトでの購入先はこちら▼▽
【楽天市場】うつぼ旨揚げ:東京愛らんどショップ
【楽天市場】うつぼ出汁(10P):東京愛らんどショップ
<店舗情報>
電話番号:03-5472-6559
店舗住所:〒105-0022 東京都港区海岸1-12-2竹芝客船ターミナル内
営業時間:平日10:00 〜 18:00、土日祝 10:00 〜 20:00
※時期により営業時間が変わりますので、お知らせをご確認ください
その他 :各種カード / 電子マネー決済 対応可、電子しまぽ使用可能、無料Wi-Fiあり
注意事項:カフェの営業は終了しております。当店専用の駐車場はありません。
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