地域振興補助事業採択事業のご紹介~抗火石を用いた平窯による釜焚き製法の新島海水塩の開発~
本事業は、新島の新たな特産品として、海水から塩を製造・販売する特産品開発事業です。
新島特産である抗火石を使った製塩釜を使用するという点や、豊富な海水を利用するなど、
地域資源を利用した新しい商品の開発として地域振興に資する事業となります。
商品について
■商品の開発・製造に関してこだわった部分
本来、塩の製造に使用する釜の断熱素材は耐火レンガを使用することが一般的ですが、他では類を見ない新島特産である抗火石を使うことにしました。
メリットとしては、抗火石は比較的軽量かつ柔らかいことから加工がしやすく、平釜製造にかかる負担が減ったことです。
塩の製造にあたっては鉄の釜を使用しており火力や熱の伝導力が強く、薪火との相性も良いので塩づくりに重要な温度調整がしやすいです。
また、薪は焼却場と連携し、新島村内で発生した廃材と間伐材を利用しています。
補助事業で制作した特産品【しおさいの塩】は、結晶の大きさにこだわっています。
火力を調整することで粒が小さいものから大きいものまで作って、あえて混在させています。
これは塩をひとなめした際、まず先に、細かい結晶が舌の上で溶けてゆき、
段々大きな結晶を味わう・・・という味の広がりを楽しんでいただくねらいがあります。
味のまろやかさ、やさしさ、力強さを感じていただければと思います。
■商品化するにあたり工夫した点
試作品製作は1年間を通して行いました。
その中で学んだことは「海水の温度やプランクトンの量は毎日変わるので、海も日々違う。同じものは作れない。」ということです。
そのため、味に関しては海の様子に任せるしかありませんが、塩職人として出来ることは、結晶の大きさをいかに上手く調整することだと思っています。
料理は何にでも合います。結晶を楽しむのであれば、天ぷらの付け塩や、塩むすびにして食べるのがオススメです!
パッケージについて
■しおさいの塩 名前の由来
波の音が轟音に感じることから、「新島の海=力強い」というイメージなことがまず一つあります。
それに加えて新島村では商売を営んでいる方はそれぞれ屋号を持たれているのですが、それがカッコイイ!と思いまして、
自分でも屋号を持ちたいと考え、塩と自分の名字である齊木(さいき)を掛け合わせて、「しおさい」という名前にしました。
同じ読み方で【潮騒】という波の音に関する単語もあるので、それも掛けています。
■パッケージのこだわり
新島に移住した頃に知り合った(一社)OIGIE のメンバーにデザイン制作を依頼しました。その際、以下の内容を取り入れてほしいとお願いしました。
① 新島らしさ
② 新島に来島するお客さんは若者が比較的多いと感じており、若い世代の方にこそ、天然塩をもっとカジュアルに知ってもらいたいという思い。
③ “血潮が騒ぐ”をキャッチコピーに!
外側の色味は抗火石を思わせる灰色、内側にはキャッチコピーを反映した赤色を差し込んでいます。
包装のサンプルを幾つか見た時に、タバコの見た目のような箱型包装に一目惚れをしました。
塩とタバコは過去、日本専売公社が取り扱っていた歴史があり、博物館の展示などセットなイメージもあったことから箱型包装に決めました。
■商品の販路について
現在、新島島内の小売店、飲食店にて、お土産品として販売や、メニューに取り入れて頂いてます。
また、口コミで広がり、本土の居酒屋や食品加工業者の方に使って頂いています。
もう少し販路開拓の営業をしないといけない、と思いつつも、
やはりこの塩の良さをしっかりと通じる方に使ってほしいという思いがあります。
■今後の展開について
今年から島内で農業を始めました。主にサツマイモ、あめりか芋を育てているので、今後は収穫した野菜としおさいの塩を使って・・とも考えています。
また、運営する飲食店ではフライドポテト用のシーズニングを6種ほど作ってみました。
代表者 齊木さんより一言
製塩の師匠から、「塩は人間にとって大切なもの、その根源は海にある。作って売るだけの人にはなって欲しくない。」
との教えを受けました。
しおさいの塩を味わった方に、海を感じてもらえるような塩づくりを心掛けています。
新島の特産品であるクサヤについても、ちょっとずつですが、しおさいの塩を使ってもらっています。
いつか、自分の塩を 100%使ってほしいなと思っています。
新島製塩所 しおさい塩匠
齊木 佑介
1988 年生まれ 埼玉県出身
2014 年 新島に移住
2015 年 居酒屋「サンシャイン」をオープン
2023 年 「しおさいの塩」販売開始